Sunday, May 1, 2011

小児科ロテーション:病棟実習編

8週間におよぶ小児科ロテーションが無事終了しました。
かなり一日の拘束時間が長かったため、ブログ更新もままならず・・・
ロテーションの期末試験も終了し、やっと一息つけたので小児科ロテの様子をざっとご紹介します。


8週間のロテーションは大きく3つのパートにわかれていました。
私の場合、最初の4週間は病棟、次の2週間は新生児室、そして最後の2週間は外来クリニックという順番でした。


病棟は血液・腫瘍科で働く機会をいただきました。本当は様々な病態みたかったので、一般病棟でもいいなと思っていたのですが、腫瘍内科に興味があるので特に変更リクエストもせず4週間の実習に突入しました。


普通病棟で働く医学生は、朝5時ごろ出勤。私は血液・腫瘍科なので少し遅めの6時に毎朝出勤しました。普通病棟の朝が一時間もはやいのは、回診の時間が1時間早いためです。朝の仕事は全て回診のための下調べと準備なので、症例をディスカッションするのに十分な情報を集めるための時間に費やされます。


医学生はふつう、2-3人の患者さんをまかされます。血液・腫瘍科では長期滞在の患者さんも多いですが、入院したての患者さんを追っていくほうが分かりやすいので、前夜に入院した患者さんなどを受け持たせてもらうことが多いです。


まずは担当の患者さんの過去24時間のバイタル、I/O(水分摂取量と排出量)、PCA(患者さん自身がコントロールできる鎮痛薬のポンプ)使用状況などを "Bedside chart"とよばれる看護師さんによる手書きのカルテをみて確認。さらに最新の血液検査や画像検査の結果はコンピューターにログインして結果を確認、カルテに記載していきます。



病棟の患者さんの病態を記載するのは"Progress Note"と呼ばれるもの。私が実習した小児科専門病院では、医学生用、レジデント用、アテンディング用のProgress Noteのフォーマットがあり、誰が患者さんを診たのかすぐに分かるようになっています。

医学生は今朝の患者さんの様子、昨晩何か病態に変わったことはなかったかを一番上にかきます。さらにバイタルサイン等の情報。そして患者さんを診察して所見を書きます。次に検査結果、薬の一覧、最後にA/P(アセスメントとプラン)を自分なりに考えて書いて終了。ここまでを医学生が全て一人でやります。





さて、医学生が担当させてもらう患者さんの全てを、研修医(通常はインターン)も診なくてはなりません。医学生が朝早くきて、最初に患者さんをみてProgress Noteを書きます。それを研修医があとから見てチェックしつつ、自分の所見やプランを加えていきます。診察所見の右側があいているのは、レジデントが自分の所見を書く欄です。さらにProgress Note の裏には研修医とアテンディングがプラン等を記載する欄が設けられています。

毎朝朝8時はMourning Report と呼ばれる一時間のコンファレンス。医学生と研修医が基本的に全員出席しなくてはなりません。内容は研修医による症例検討会だったり、国家試験対策のクイズ形式のレクチャーだったり、アテンディングが患者さんを招いて症例を紹介するものだったり、様々です。

Morning reportが終わると医学生はそれぞれの所属の病棟に。担当のアテンディングがつき次第、回診が始まります。この回診のやり方はアテンディングによって様々です。コンフェレンスルームで皆で座ってやるものから、Walking roundといって病棟で実際に患者の部屋を訪問しながらやるものまで。血液腫瘍内科のアテンディングは基本的に自分で朝患者さんを全て診てまわるので、回診はコンフェレンスルームで座ってのもの。コーヒーなど持参できます。

回診には医学生、研修医(インターン1名、シニアレジデント1名)、アテンディング(指導医)をはじめ、看護師、ソーシャルワーカー、薬剤師が参加します。プレゼンテーションは「学ぶ場」と捉えられていますから、医学生が優先的にやらせてもらいます。医学生が漏らした事項を研修医が補足してくれ、間違ったアプローチを指導医が正してくれます。

患者さんのケアに関わるほぼ全ての医療従事者が回診に参加するのはとても大きな意義があると思います。看護師の方は患者さんの詳しい様子を知っていますし、患者さんの精神状態や細かい訴え、家族間で問題が生じたときなど報告してくれます。また薬剤師さんはそれぞれの患者さんにより良くあう処方の提案をして下さいますし、処方ミスなど起きないようにたえず目を光らせてくれています。みなさん、医師にとっても欠くことのできないすばらしい「情報源」です。


アテンディングによっては回診のときにいろいろと教授をして下さいます。ふつうは回診中の症例に即したことをTeachingして下さいますが、回診が終わって時間があまれば、別のトピックについて話してくださる人もいます。

お昼は医学生用に、研修医がやってくれるレクチャーがあります。みんなご飯をもちよって参加します。それがが終わると午後は、オーダーを書いたりといった様々な雑用をします。基本的に研修医のアシストです。

その後医学生は研修医ラウンジにあつまり、アサインメントのプレゼンテーションをしたりします。運がよければ3時ぐらいに開放されます。

さて、病棟実習ではLate stay と夜勤をしなくてはいけません。Late stayは週に1~2回、6時まで居残りです。夜勤はまる一週間夕方6時から朝6時までの勤務です。Late Stayと夜勤では、基本的に入院患者さんのAdmissionの手伝いをします。

ERに入院決定となった患者さんがあれば、医学生が最初に送られます。そこでComplete History & Physical (問診と診察)を行います。全ての情報をH&Pのカルテ用紙に記入し、ここでもA&Pを医学生が自分なりに考えて記載します。それらが終了したところで担当の研修医にポケベルで報告。研修医と落ち合ってカルテ情報の確認と検討が行われます。



医学生によって始められる、入院患者用のH&Pカルテ

これら一連のH&Pは、M2から練習させられますしM3の臨床実習を通じて何度も何度も繰り返しやらされるので困難ではありません。また所見でよく使われる省略語の使用などもかなり板についてきますし、自分で考えてプランを練る習慣が養われます。これらは米国で臨床をやっていく上では不可欠と感じます。

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