Sunday, March 6, 2011

医学生はお客様以下?

八週間の産婦人科ロテが無事に終了しました。
出産の立会いや、産婦婦人科の手術などは見せてもらう価値がありました。

米国のメディカルスクールで、私は素晴らしい経験をさせてもらっていると思います。
でも、全て「よい経験」ばかりしているわけでもありませんし、「これはちょっと嫌だ」と思うこともあります。

今回のエントリーでは、産婦人科ロテで個人的に気に入らなかったところ、いやな思いをした事を書きたいと思います。


いままで経験した内科、精神科、家庭医療のロテでは、私も医学生として医療チームの一員として扱われました。

患者さんを担当させてもらい、自主的に問診や触診をしてカルテを書きます。そして診断やマネジメントの意見を自分なりにのべ、ディスカッションにも参加させてもらい、「臨床の場での考え方」を学ばせてもらう貴重な機会をいただきました。

産婦人科ロテでも同じような体験を期待していたのですが、雰囲気がかなり違いました。
産科の病棟では朝5時に出勤し、4~5人の患者さんを診ます。カルテを書いて7時の回診をまちます。

回診では医学生が症例報告をしようと試みますが、1~2人の報告をした後に「時間短縮」のためか途中からレジデントがはいってきて医学生のみた患者さんの状況をさらっと説明して終わらせてしまうこともしばしば。これでは5時から患者さんをみて、一生懸命カルテを書いている医学生にとって、朝早くからきて頑張る張り合いがありません。口頭プレゼンは、医学生にとってとても重要な臨床経験だからです。

朝の回診がおわると、出産や帝王切開が見れるかもしれないので午後5時までスタンバイさせられます。帝王切開は時間がきまっているものもありますが、出産はいつ起こるか予測できないのでずーっとスタンバイしていることもあります。

そこでロテが始まったばかりの頃は「なにか手伝えることはありますか」とインターンやレジデントに聞きにいきました。たいてい「何も無い」といわれます。それでも何度か聞きに言っていると、なんとなく「けむたがれている」のが感じ取れます。内科などだったら「何もないよ。でも聞いてくれてありがとうね」とか、何か小さな用事でも考えて与えてくれるのとは対象的でした。

さらに必要なときに呼んでくれるレジデントもいれば、まったく呼んでくれない人もいました。出産を見たいばあい、自分の担当の患者さんの部屋にレジデントが向かった様子があれば、あわててチェックをしにいく、なんていうのも普通でした。「お産が始まるから、おいで」なんて誘ってくれるレジデントは一人もいませんでした。もっとオープンに事をすすめてもらえれば、お互い気持ちよくやれるのに、と思いました。

ときに「産婦人科のレジデントは医学生きらい?」「邪魔あつかい?」と思われずにいられませんでした。他の学生でも、同じような印象をうけている学生が多くいるようでした。
またこんな虫けら経験も・・・

クリニカル最後の週は、自分が希望した婦人科腫瘍科のロテでした。

最後の日のアテンディングのDr.C。レジデントもとくに手術をさせてもらえない、すごくワンマンな感じの人でした。普通は私も手洗いさせてもらって、クランプで開腹部をおさえたり、糸を切ったりなどの簡単な作業をさせてもらえます。このDr.Cの場合は、「手洗いもしなくていいよ」とレジデントに言われました。

腹腔鏡手術がメインなため、医学生にできることは何もないですから、私は承知して手術室の片隅に立っていました。邪魔にならないように、手術台から4-5m離れたところに立っていると、手洗い前のDr.Cが入ってきます。そして私のところにやってきて「あと一歩さがれ」といいます。「十分はなれていると思うけど」と考えながら支持にしたがいました。

症例は「子宮摘出術」を何年か前に受けた患者さん。頭蓋骨にLytic lesionがあり、腹部CTで腫瘤が認められたので、腹腔鏡手術にて摘出という運びでした。

腹腔鏡手術だったので、手術室に3つほどあるスクリーンを見ていました。手術の様子はこれで見えますので別に文句はありません。しかし手術がはじまって、スクリーンに映し出されたのは「子宮摘出術」を何年か前に受けたはずの腹腔内に立派な「子宮」がド~ンと。急遽、腹腔鏡手術から開腹術へと変更になりました。

Dr.Cはイライラしているようでした。スクリーンは全て消され、開腹術が開始されました。5mほど手術台から離れて立っている私には何が起こっているのかさっぱり見えません。それでも文句を言わずに立っていると、患者さんの枕元に座っていた麻酔科の先生が、「こっちに来たら?良く見えるよ」と言ってくれたので、そちらに。さらに足踏み台を貸していただいて、患者さんと術野をしきる青いドレイプ(紙の布)の後ろから、ちょこんと頭をだして手術を間近でみることに。これはとても見晴らしが良かったです。

するとしばらくして、青いドレイプをとめていたクリップが「カチッ」音をたてて外れてしまいました。私はすぐに直そうと思って手を伸ばしましたが、Dr.Cに「触るな!手術がめちゃくちゃになるから、何も手をださないでくれ」と怒鳴られました。確かに私は手洗いしてないですが、手袋はめていたし。さらにドレイプを直したのは、手洗いはおろか素手の麻酔科の先生だし。。。

麻酔科の先生は小さな声で「急に開腹になったからね、イライラしてるのよ。気にしなくていいよ」と言ってくださいましたが。なんだか虫けらのように扱われている気持ちがしました。

きっともっとキツイ医師はいるのでしょうが、こういう体験をすると「産婦人科医」のイメージがとても悪くなってしまいます。「学生であるからしょうがない」といえばそれまでですが、医学生の興味を低下させてしまうという意味では、産婦人科プログラムのプラスにならないのでは、と感じます。

愚痴が多くなってしまいましたが、産婦人科の医師やレジデントは「いまいち」な人が多かったけど、「産婦人科」という専門は興味深いと思いました。

お産は何度見ても感動的な瞬間ですし、薬剤投与や手術などバラエティーにとんだ医療を供給できるのは素晴らしいなと思います。また、妊婦さんも大多数は健康なので、問診とかも楽だなと思いました。内科のように複雑な症例はとてもchallengingで、どうしてよいか分からないこともしばしばです。産婦人科はどちらかというとプロトコールがしっかりしているので、プラクティスとしてはやりやすいのでは、という印象でした。

来週からは心新たにして、小児科ロテに突入です。

8 comments:

  1. 頑張れ 未来のDr.さん
    私も応援してるよ。

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  2. bouhaku さん、

    おやさしいお言葉どうもありがとうございます。嫌な体験も、修行の一部かなと思うことにしています。そして「反面教師」てきな先生も見て、「私だったら将来、あんなふうに医学生を扱わない」と心に誓ったりもする機会になっています。

    コメントどうもありがとうございました。

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  3. うちの大学では(も)、産婦人科の先生方は素晴らしい人ばかりですが、医学生は今ひとつ「させてもらっていることが少ない」という感じがします。科の特性なのでしょうか?

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  4. どうなんでしょうね。私が感じたのは「やらせてもらえるか否かはレジデントや指導医次第」という感じでした。それからPelvic examも、ほとんどやらせてもらえなかったのは「なぜ婦人科ロテなのに?」と思いました。家庭医ロテのほうが、よっぽどやらせてもらえました。

    科の特性、でしょうかね?

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  5. ローテお疲れ様でした。
    教育システムやプログラムも大事ですが、教育を担う現場の人達(指導医など)がやはり大事なんだと思います。この記事を読ませて頂いてそう思いました。

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  6. おっしゃるとりです。ロテが楽しくできるかは、本当に指導医と雰囲気によりますね。仕事がきつくても、雰囲気がよければ気持ちよくすごせます。このへんは医療関係でなくても、どの職場でも言えることでしょうね。基本的なことなんだと思います。

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  7. 拝読にて、昔を思い出しました。確かに学生のローテートをメンドイと感じさせる指導医はどの科にもおりました。実際に出産に立ち会った時の感激はいまだに覚えております。私は学生結婚のため、息子の出産に5年生時たち合いました。無痛分娩が主体で、胎児監視装置をつけてが当時母校では主流でした。婦人科腫瘍。大変ですね。そのエネルギーはどこからくるのでしょう。若さかな。

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  8. Diverさん、

    たしかにご自分のお仕事が忙しいときに、学生の指導はしんどいことも多いと思います。そうですね、出産は感動的ですよね。でもけっこう血が好きでないとやれませんね。笑

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