今日はずいぶん具合がよくなったのでMFMクリニックに。
まずはDr.Dに「調子はどう?」と聞かれます。
「ずいぶん良くなりました。昨日は悪寒と、からだのだるさがあったのですが」というと、
「それじゃまだ、完全に治ってないんじゃないの?極力妊婦さんに悪い風邪を染さないようにしないと。今日お休みにするか、研修するかあなたに任せるけど・・・」とちょっとプレッシャー。
一日休んだ昨日の分もとり返したかったので、「妊婦さんに直接手を触れない事と、サニタイザーを頻繁に使用して、研修をする」ことに決めました。
今日の糖尿病の妊婦さんを中心に診ました。36週でかなり赤ちゃんが巨大化している妊婦さんがいて、ポーンと突き出たおなかにちょっとびっくりしてしまいました。
今日の午後は学校で、必修の授業がありました。
そこでMFMクリニックを2時に後にし、雨の中学校に向かいました。
M1とM2では「On Being a Doctor」というタイトルで、必修の倫理のクラスがあります。神経科医でもある教育学部の副学長の先生が講義して下さいます。同じ先生が教えてくださり、M3で必修となっているのが「Life, Death, and Dying」といわれるEnd of Lifeについて考える一連の講義です。M3では学生はみな臨床実習の真っ最中ですが、研修から抜け出して必ず出席するようにと言われています。
今日はホスピスと緩和ケアがご専門の精神科の先生が、精神科からみた「End of Life」ケアのお話をして下さいました。講義内容のほんの一部ですが、私が特に心にのこった箇所をご紹介したいと思います。
人は死を目前にしたとき、様々な感情をもつものです。
不安、恐怖、孤独感、罪悪感、絶望感・・・
講義ではPTSD(心的外傷後ストレス障害)を病んだ退役軍人の方の例を挙げていましたが、人は多かれ少なかれ、とりかえしのつかない自分の人生を振り返るとき「自分の人生はこれでよかったのだろうか」「やり残したことがある」「生きてきたかいがあったのだろうか」「深く後悔していることがある」などの思いに悩まされるのが普通ではないでしょうか。
精神科医ではこのような「グリーフケア」を、Psychotherapy またはカウンセリングのかたちでやるのだそうです。
グリーフケアで大切な要素は:
1)Active Listening (積極的傾聴)
Active Listening について丁寧に解説されているブログがありました。
詳しくはこちらhttp://digitalword.seesaa.net/article/16372008.html
2)患者さんの人生について一緒に振り返ってあげること
3)人生の終わりに立って、Closure (一定の区切りがつくこと)を認めさせてあげること。
4)患者さんが生きてきて、この世に存在したことで、達成されたことや社会に貢献したことを認めてあげること
などを挙げて下さいました。
そしてカウンセリングの根本となるのは「患者さんがどのような人生をおくり、どのような人物であったか」を振り返り、讃えてあげる事が重要だと教わりました。
患者さんが平和な死(Peaceful death)を迎えられるために、医療従事者にはまだまだやらなくてはいけないことがあるな、と考えずにはいられませんでした。そして患者さんとの「対話」が、いかに重要であるかと気づかされた講義でもありました。
癌の終末期の「スピリチュアルペイン」に対するケア、としては日本ではノートルダム女子大の村田先生による「村田理論」が有名です(英語論文もあります)。
ReplyDelete村田先生の弟子の、小澤竹俊先生が、村田理論をよりわかりやすく図示した理論もあります(村田先生からはあまりこころよく思っていないようですが)。
自ら実践していて一番難しいのは、active listeningのところです。
村田理論では「傾聴」がケアの柱となるので、
例えば「私の病気は治るんでしょうか」という質問に、
主治医として、病状説明を求められているのか、
「病気は治るのか、と考えてらっしゃるんですね」
と反復して次の言葉を待つべきか、
判断に悩むことも多いです(村田先生の授業では、この点をよく注意されました)。
Life Reviewはよくやる方法ですが、有用ですし、会話も盛り上がることが多く結構面白いです。
日本人の方は謙遜して、いろいろと話して下さらないかたもいるのではないでしょうか?その点米国の患者さんはとてもおしゃべり好きなので、ご自分の人生についていろいろと話して下さる方も多いです。
ReplyDelete米国風のカウンセリングが100%日本人の気質に会うかは、私にもわかりかねます。先生がおっしゃっている「私の病気は治るんでしょうか」という質問に、「病気は治るのか、と考えてらっしゃるんですね」と反復して次の言葉を待つ。さらに「どうしてそう考えていますか」とか「ご自分の病気についてどれだけ理解されていますか」と探っていくのがこちら式です。難しい事もあるかもしれませんが、医師と患者の交互理解が重要視されています。
日本でもEnd of Lifeのスピリチュアルケアに関して、ご研究なさっている先生がいらっしゃることを教えてくださってどうもありがとうございます。またNishi先生のように実際の臨床の場で実施されている方がおられること、本当に心強く思います。どうぞ、これからも患者さんのためにがんばってください。応援しています。